南山剳記

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マインドアサシンかほる 説法その1⑤(服部 洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(⑤)

服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年

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【服部 洋介・撰】

 

解説

すでに①~④の記事で述べたとおり、25年ほど前、18歳の時分に描いた、世にもくだらねー漫画。今回から、いよいよ話が進展して、悪者たちの抗争がくりひろげられるわけであるが、読めばわかることなので、特に解説すべきことはない。なお、文中、特段に不適切な箇所は墨塗にした。

 

関連項目

マインドアサシンかほる 説法その1(①)
マインドアサシンかほる 説法その1(②)
マインドアサシンかほる 説法その1(③)
マインドアサシンかほる 説法その1(④)
マインドアサシンかほる 説法その1(⑥)
マインドアサシンかほる 説法その1(⑦) 

 

前回までのあらすじ

日本悪者連盟の懇親会に先立ち、お食事係の林さんが暗殺された。下手人探索のために臨時総会が開かれることになったのだが……。メンバーは暗黒歌道、ヤクザ、暗黒音楽協会、ドイツ騎士団にアサシンとかなりイッちゃった顔ぶれだが、それだけではないという話になり……。

 

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まだ出席者がいると聞いておどろくマルサン。

 

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その上、どれだけの悪者が登場するというのか?

 

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なお、伏見稲荷大社とは一切関係ありませぬ。

 

ところで、戦前にはキツネやミイサンなど、得体の知れないあやしーのを神サンと拝んで信者を集めた民間宗教団体がかなりあって、官幣大社なんどに行ってもナンの話も聞いてもらえない庶民たちが、現世利益を求めてワンサカと集まってきたという話である。その結果、一見、お稲荷さんみたいな社がアッチコッチにできて、そのまま今日も残っているものがあるようである。

ところで、自分でも民間の新興宗教団体に潜入して、先生の助手なんかしておった赤松啓介の書いたものによると、昭和の初め頃、生駒山付近の行場に、正一位の上に「最上位〇〇稲荷」というのがあってびっくりした、という。聞いてみたら、それはエライお稲荷さんで、正一位の上の「最上位」をもらったものだという。誰にどこからもらったのかと聞くと、「先生がもろてきはりました」という。気をつけて見ていると、大阪、神戸あたりにもときどき「最上位」稲荷大明神があるが、さすがにまだ珍しいという。一般にお稲荷さんは「正一位」と決まっているが、あれにも正と権、あるいはニセがあるそうだからややこしいとのことで、「正」というのは伏見の稲荷大社で位記をもらった神サン、それがないのが自称の「権」だというのだが、赤松曰く「位記をもらったというのも怪しいもので、同大社の記帳に書くと承認ということらしい」*1。もっとも、最上稲荷については、むしろ岡山の最上稲荷山妙教寺日蓮宗)にヒントを得たもののようにも思われるが、どうであろうか。ただ、赤松は播州の生まれであり、備中の妙教寺のことはよく知っていたものと思われるから、この見方は当たらないのかもしれない。

なお、この件、『民衆宗教史叢書』というシリーズの第30巻にあたる「憑霊信仰」(小松和彦編、雄山閣、1992年)という本に収められている「カミ、つきもの、ヒト : 島原半島民間信仰をめぐって」(石毛直道松原正毅・ 石森秀三・ 鷹巣和則)という論文に具体的な記述があって、そこらのおキツネさんにどないやって位をとってくるのか、そのへんのことを調べて書いてある。野狐がどうやってお稲荷さんになるのか、まこと興味深い。

と書いてしまうと、某Yさんもあながち伏見稲荷と無関係とはいえないように見えるかもしれないけれど、そのへんの謎は、漫画を読み進めることで、氷解するであろう。たぶんね。

 

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狼狽する悪者たち。

 

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稲荷教団は、国家レベルの実力組織らしい。

 

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すでに某Yの旗下に入ったらしいドイツ騎士団

 

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あまり不条理な殺害理由だ。

 

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そのフランスの人、どこの誰なのか、私も知らない。

 

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ほとんど狂気の沙汰である。

 

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た、たしかに……。

 

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暗黒歌道すらビビる恐ろしさだ。

 

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稲荷教団に異見つかまつるヤクザ。

 

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やはり暴力で解決だ。

 

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まさかの「微笑み三年殺し」か!?

 

極悪宮尾会と稲荷教団の全面抗争、勝負は見えているような気もするが、多少の意地は見せてほしいところである。次回へ続く。

*1:赤松啓介『宗教と性の民俗学明石書店、1995年、99頁