南山剳記

読書記録です。原文の抜き書き、まとめ、書評など、参考にしてください。

半過擬古

前頭側頭自閉軒全集鈔⑥
半過擬古[1]

左が半過岩鼻、右が塩尻岩鼻(長野県上田市)

険なるかな、半過(はんが)の岩、千曲南岸に屹立す。
懸崖峭絶四十丈、崖下に巨窟二穴あり。
嘗て小鸇(しょうせん)、巣を営みて子孫殷殷たり。
今や鳥飛の絶へんとするや悲しき。
黒雲山上に翻り好雨まさに降らんと欲す。
下土に水ふらせ、物を潤して殆ど声なし。
而して信陽に春の闌(たけなわ)は過ぎぬ。

半過岩鼻、上田市にあり。断崖絶壁、120メートル、太古は千曲北岸の塩尻岩鼻なる斜面急峻の崖谷と一続きの河床であったものが、千曲川に侵食され、今の奇観を呈するに至る。半過は石英角閃石斌岩(ひんがん)、マグマが上昇してできた半深成岩の岩体で、柱状節理が発達し、巨大なノッチあり。チョウゲンボウが営巣す。近年見ること稀なりと云う。塩尻岩鼻にはグリーンタフが露出、いわゆる内村層に属す。
                                 〈2023年4月7日〉

 

[1] 『自閉軒日録』2023年4月7日条に同文あり。