南山剳記

読書記録です。原文の抜き書き、まとめ、書評など、参考にしてください。

藪雨女

前頭側頭自閉軒全集抄⑪藪雨女[1] 藪雨女(『旭山玉繭洞妖怪図彙』より) 昔、長高てふ弓道班に、チャリにて流鏑馬しける女子二員ありけり。介添ひきつれて矢道に乗り入れ、顧問大ひにうろたへぬ。わけを聞くに「妖怪・藪雨坊(ヤブサメンボー)の仕業なれば、…

弓教え

前頭側頭自閉軒全集抄⑩弓教え 弓教え(『旭山玉繭洞妖怪図語彙』より) 武州に美女木てふ所あり。鎌倉の右大将、奥州を攻め玉ひし時、ここに屯し玉ひけり。夢に八幡大菩薩の立ち玉ひて、御告し玉ひけるとかや。のち鶴岡八幡、領家なりしとき、飛射騎とて流鏑…

まゐ子奇譚

前頭側頭自閉軒全集抄⑨まゐこ奇譚 まゐ子(『旭山玉繭洞妖怪図彙』より) 昔、武蔵国は戸田てふ所にマヰ子てふ者ありけり。日頃、木の下にて遊びけるに、さみしき余りに人にチョッカイして咳をさすとか云々。人が構はず横臥せば、益々構って咳させ候。村人困り…

この世とあの世をつなぐ橋

前頭側頭自閉軒全集抄⑧この世とあの世をつなぐ橋[1]「この世とあの世をつなぐ橋」ッてのがある。何処かは言えない。阿呆が押し寄せて、大挙してあの世に行かれても、あの世の人が迷惑するだけだ。だが、うまくしたもので、俺なンかは何度通っても不思議と異…

ズルビン奇談

前頭側頭自閉軒全集抄⑦ズルビン奇談 最近、世にも奇妙な事件が出来した信濃国 山深い信州のどん詰まりに、かつて芋井草堂と呼ばれた一宇の寺がある。百済から来た仏を祀ったことから、「百済寺」ともいった。今の善光寺である。その西之門といわれるあたりに…

半過擬古

前頭側頭自閉軒全集鈔⑥半過擬古[1] 左が半過岩鼻、右が塩尻岩鼻(長野県上田市) 険なるかな、半過(はんが)の岩、千曲南岸に屹立す。懸崖峭絶四十丈、崖下に巨窟二穴あり。嘗て小鸇(しょうせん)、巣を営みて子孫殷殷たり。今や鳥飛の絶へんとするや悲しき。黒…

奇獣ヲゴルの図

前頭側頭自閉軒全集抄⑤ 奇獣ヲゴルの図[1] 『ヲゴルノ図』(江戸後期?) 仏壇から出てきたという古図。 玉繭子(ぎょくけんし)、知友宅の仏壇より見つかりし『ヲゴルノ圖』[2]なる古図を予に示す。詞書に「尾は五色、天鵞絨(びろうど)の毛のごとし」とあり。…

ゆいちゃんと能成寺

前頭側頭自閉軒全集抄④ ゆいちゃんと能成寺[1] 定林山 能成寺(山梨県甲府市、臨済宗妙心寺派) 玉繭南澤氏より報せあり、京都ゆいちゃん[2]が夫君に表弟・樋口氏あり、予が動画[3]に甲府五山中の一寺を見、「俺の実家だ」と言ひけるとかや。五山の一、妙心…

長高三大ピアニストのこと

前頭側頭自閉軒全集抄③ 長高三大ピアニストのこと 高校ンとき、——長高(ちょうこう)三大ピアニスト。ッてのがいた。もちろん、選んだのは俺だ。で、具体的に誰かッていうと、1人目は先に出た、——ササヤン。*1で、実際、プロになったから間違えねえ。まあ、コ…

がぁごん、イタリアへ行く

前頭側頭自閉軒全集抄② がぁごん、イタリアへ行く 長野県士族にして音楽家のがぁごん氏が、苦学してイタリアへ行くという。理由は、ほとぼりが冷めるまで言えない。日本の楽壇にもイロイロ事情ッてモンがある。そして、その関係者ン中には、私にも面識のある…

坂本龍一先生を哭す

前頭側頭自閉軒全集抄① 坂本龍一先生を哭す 昨晩遅く、坂本龍一先生が亡くなられたとの報に接した。言っておくが、坂本氏は私の先生じゃねえ。仇名が、——教授。であったから、ちょっと敬って呼んでみたまでだ。ちなみに、私も学生時代、某国立大の医学部で、…

力なき者たちの力(ハヴェル)

力なき者たちの力 『力なき者たちの力』ヴァーツラフ・ハヴェル、 阿部賢一 訳、人文書院、2019年 剳記一覧 :: 南山剳記 【徳武 葉子・撰】 力なき者たちの力 作者:ハヴェル,ヴァーツラフ 発売日: 2019/08/15 メディア: 単行本 凡例 ★は撰者のコメントです。…

悪党と海賊(網野善彦)

悪党と海賊 網野善彦「悪党と海賊」(『悪党と海賊――中世日本の社会と政治』所収)、法政大学出版局、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 所蔵館 市立長野図書館 関連項目 『戦国の軍隊 現代軍事学から見た戦国大名の軍隊』(西股総生) 『雑兵…

雑兵たちの戦場(藤木 久志)

雑兵たちの戦場 藤木久志『新版 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り』(朝日選書777)、朝日新聞社、2005年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 所蔵館県立長野図書館 【新版】 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り (朝日選書(777)) 作者:藤木 久志 …

戦国の軍隊(西股総生)

戦国の軍隊 西股総生『戦国の軍隊 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』、学研パブリッシング、2012年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 戦国の軍隊 (角川ソフィア文庫) 作者:西股 総生 発売日: 2017/06/17 メディア: 文庫 こ ※なお、本記で取り上げる…

働かない(トム・ルッツ)

働かない トム・ルッツ『働かない 「怠けもの」と呼ばれた人たち』、小澤英実・篠儀直子訳、青土社、2006年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 書誌 Doing Nothing A HISTORY OF LOAFFRS, LOUNGERS, SLACKERS, AND BUMS IN AMERICABY TOM LUTZCOPYRIGH…

マインドアサシンかほる 説法その1⑧(服部 洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(⑧) 服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解説 すでにご存じの通り、かれこれ25年前、…

マインドアサシンかほる 説法その1⑦(服部 洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(⑦)服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解説 すでにご存じの通り、かれこれ25年前、1…

マインドアサシンかほる 説法その1⑥(服部 洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(⑥) 服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解説 すでに縷々述べ来ったように、25年ほど…

マインドアサシンかほる 説法その1⑤(服部 洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(⑤) 服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解説 すでに①~④の記事で述べたとおり、25年…

マインドアサシンかほる 説法その1(④)(服部洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(④) 服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解説 くりかえしになるが、かれこれ25年ほど…

マインドアサシンかほる 説法その1(③)(服部洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(③) 服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解説 かれこれ25年前、18歳の砌にものした、…

マインドアサシンかほる 説法その1②(服部洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(②) 服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 【服部 洋介・撰】 解説 すでに①で書いたように、かれこれ25年ばかり昔、18…

マインドアサシンかほる 説法その1①(服部洋介)

マインドアサシンかほる 説法その1(①) 服部洋介『マインドアサシンかほる』説法その1(気がふれ茶った会 編『気がふれ茶った会』第1号)、気がふれ茶った会、1995年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解説 かれこれ25年前、18歳の頃に描いたトン…

トマス・アクィナス(人類の知的遺産20)(稲垣良典)

トマス・アクィナス人類の知的遺産20 稲垣良典『トマス・アクィナス』(人類の知的遺産20)、講談社、1979年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解題 本朝におけるトマス・アクィナス(1225頃~1274、スコラ哲学者)研究の第一人者・稲垣良典博士(192…

ラッセル思想辞典(牧野 力・編)

ラッセル思想辞典 牧野力編『ラッセル思想辞典』、早稲田大学出版部、1985年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解題 ラッセルについては、これまでにもあちこちの剳記で取り上げてきたから、今さら詳しく説明しようという気にはなれないし、別にラッ…

社会とつながる音楽家(カールーザース)

社会とつながる音楽家 グレン・カールーザース「社会とつながる音楽家」(ドーン・ベネット編著『音大生のキャリア戦略――音楽の世界でこれから生き抜いてゆく君へ』所収の第6章)、久保田慶一編訳、春秋社、2018年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 …

音楽と教育――社会学的アプローチ(ジョン・H・ミュラー)

音楽と教育――社会学的アプローチ ジョン・H・ミュラー「音楽と教育――社会学的アプローチ」(N・B・ヘンリー編『音楽教育の基本的概念』所収)、美田節子訳、音楽之友社、1986年 剳記一覧 :: 南山剳記 【服部 洋介・撰】 解題 本論文は、全米音楽教育者協議会…

誰のために法は生まれた(木庭 顕)

誰のために法は生まれた 木庭顕『誰のために法は生まれた』、朝日出版社、2018年 剳記一覧 :: 南山剳記 【徳武 葉子・撰】 誰のために法は生まれた 作者:木庭 顕 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 2018/07/25 メディア: 単行本 凡例 ★は撰者の私的書き込…

心を操る寄生生物(キャスリン・マコーリフ)

心を操る寄生生物 キャスリン・マコーリフ『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』、西田美緒子訳、2017年、インターシフト 剳記一覧 :: 南山剳記 【徳武 葉子・撰】 心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで 作者:キャスリン・マコーリフ 出版社/メ…