南山剳記

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力なき者たちの力(ハヴェル)

力なき者たちの力

『力なき者たちの力』ヴァーツラフ・ハヴェル阿部賢一 訳、人文書院、2019年

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【徳武 葉子・撰】

 

力なき者たちの力

力なき者たちの力

 

 

凡例

は撰者のコメントです。 

 

著者について/私が読んでみた理由

 

ヴァーツラフ•ハヴェルについてWikipediaより)

1936年〜2011年、劇作家、チェコスロバキア大統領、チェコ共和国初代大統領、「憲章77」を起草。

チェコマレーで1890年に生まれた劇作家のカレル・チャペックと、ナチスドイツの収容所で命を落とした画家の兄ヨゼフ・チャペック。劇作家からみた激動の時代はどんなものだったのか興味をひかれた。

 

本文の内容より

 

p.25

ポスト全体主義の体制では、本質的には権力は個人から個人へ、派閥から派閥へ、世代から世代へと円滑に移行される。


p.25

権力闘争があったとしてもすぐに回復し、イデオロギーが影響を受けることはない。


p.29

青果店店主がスローガンをショーウィンドウに置いたのは、誰かが読んでくれるだろうとか、誰かを説得できるのではないかという希望からではなく、何千もの他のスローガンとともに、誰もがよく知っている風景を形作るためである。風景にはもちろん潜在的な意味がある。【全世界の労働者よ、ひとつになれ!】


p.30

青果店主と公務員の婦人。2人はともに支配される客体であるが、同時に支配する主体でもある。体制の犠牲者であると同時に、その装置となっている。


p.30

ポスト全体主義の本質とは、あらゆる人間を権力構造に取り込むことである。


p.32

体制が人間を疎外するのではなく、疎外された人間が自身の無意識を投影するかのように、その体制を支持するからである。


p.38

開かれた「真実の生」の協力者の姿は見えないものの、どこにでもいる。つまり、その「隠れた領域」を持っているのである。そこから何かが生まれ、声を上げ、理解者を見出す。それは潜在的な交流が行われる空間である。


p.42

政治を改革しようという試みは人々が目覚めた原因ではなく、その最終的な成果であったということである。


p.57

人間が体制に仕えるのではなく、体制が人間に仕えることができるのかどうかが肝要。


p.72

良い仕事は悪い政治の真なる批判。


p.79

ポスト全体主義体制は、一人で体制に抗い、見捨てられ、孤立した個人に対して全面的な攻撃を仕掛ける。


p.83

「眠っている」この社会は、消費社会の競争に明け暮れ、ポスト全体主義体制にどっぷり「浸かっている」ため抵抗を認めず、それを自身への攻撃と捉え、体制への併合を強める反応を見せるだろう。


p.92

法、それ自体は、決してそれより良いものを生み出すことはない。法に課せられているのは、奉仕することである。法の意義は、法自体にはない。