南山剳記

読書記録です。原文の抜き書き、まとめ、書評など、参考にしてください。

2023-01-01から1年間の記事一覧

藪雨女

前頭側頭自閉軒全集抄⑪藪雨女[1] 藪雨女(『旭山玉繭洞妖怪図彙』より) 昔、長高てふ弓道班に、チャリにて流鏑馬しける女子二員ありけり。介添ひきつれて矢道に乗り入れ、顧問大ひにうろたへぬ。わけを聞くに「妖怪・藪雨坊(ヤブサメンボー)の仕業なれば、…

弓教え

前頭側頭自閉軒全集抄⑩弓教え 弓教え(『旭山玉繭洞妖怪図語彙』より) 武州に美女木てふ所あり。鎌倉の右大将、奥州を攻め玉ひし時、ここに屯し玉ひけり。夢に八幡大菩薩の立ち玉ひて、御告し玉ひけるとかや。のち鶴岡八幡、領家なりしとき、飛射騎とて流鏑…

まゐ子奇譚

前頭側頭自閉軒全集抄⑨まゐこ奇譚 まゐ子(『旭山玉繭洞妖怪図彙』より) 昔、武蔵国は戸田てふ所にマヰ子てふ者ありけり。日頃、木の下にて遊びけるに、さみしき余りに人にチョッカイして咳をさすとか云々。人が構はず横臥せば、益々構って咳させ候。村人困り…

この世とあの世をつなぐ橋

前頭側頭自閉軒全集抄⑧この世とあの世をつなぐ橋[1]「この世とあの世をつなぐ橋」ッてのがある。何処かは言えない。阿呆が押し寄せて、大挙してあの世に行かれても、あの世の人が迷惑するだけだ。だが、うまくしたもので、俺なンかは何度通っても不思議と異…

ズルビン奇談

前頭側頭自閉軒全集抄⑦ズルビン奇談 最近、世にも奇妙な事件が出来した信濃国 山深い信州のどん詰まりに、かつて芋井草堂と呼ばれた一宇の寺がある。百済から来た仏を祀ったことから、「百済寺」ともいった。今の善光寺である。その西之門といわれるあたりに…

半過擬古

前頭側頭自閉軒全集鈔⑥半過擬古[1] 左が半過岩鼻、右が塩尻岩鼻(長野県上田市) 険なるかな、半過(はんが)の岩、千曲南岸に屹立す。懸崖峭絶四十丈、崖下に巨窟二穴あり。嘗て小鸇(しょうせん)、巣を営みて子孫殷殷たり。今や鳥飛の絶へんとするや悲しき。黒…

奇獣ヲゴルの図

前頭側頭自閉軒全集抄⑤ 奇獣ヲゴルの図[1] 『ヲゴルノ図』(江戸後期?) 仏壇から出てきたという古図。 玉繭子(ぎょくけんし)、知友宅の仏壇より見つかりし『ヲゴルノ圖』[2]なる古図を予に示す。詞書に「尾は五色、天鵞絨(びろうど)の毛のごとし」とあり。…

ゆいちゃんと能成寺

前頭側頭自閉軒全集抄④ ゆいちゃんと能成寺[1] 定林山 能成寺(山梨県甲府市、臨済宗妙心寺派) 玉繭南澤氏より報せあり、京都ゆいちゃん[2]が夫君に表弟・樋口氏あり、予が動画[3]に甲府五山中の一寺を見、「俺の実家だ」と言ひけるとかや。五山の一、妙心…

長高三大ピアニストのこと

前頭側頭自閉軒全集抄③ 長高三大ピアニストのこと 高校ンとき、——長高(ちょうこう)三大ピアニスト。ッてのがいた。もちろん、選んだのは俺だ。で、具体的に誰かッていうと、1人目は先に出た、——ササヤン。*1で、実際、プロになったから間違えねえ。まあ、コ…

がぁごん、イタリアへ行く

前頭側頭自閉軒全集抄② がぁごん、イタリアへ行く 長野県士族にして音楽家のがぁごん氏が、苦学してイタリアへ行くという。理由は、ほとぼりが冷めるまで言えない。日本の楽壇にもイロイロ事情ッてモンがある。そして、その関係者ン中には、私にも面識のある…

坂本龍一先生を哭す

前頭側頭自閉軒全集抄① 坂本龍一先生を哭す 昨晩遅く、坂本龍一先生が亡くなられたとの報に接した。言っておくが、坂本氏は私の先生じゃねえ。仇名が、——教授。であったから、ちょっと敬って呼んでみたまでだ。ちなみに、私も学生時代、某国立大の医学部で、…