村田エフェンディ滞土録(梨木 香歩)
村田エフェンディ滞土録
【徳武 葉子・撰】
評
我々は自然の命ずる声に従って、助けの必要な者に手を差し出そうでないか。この一句を常に心に刻み、声に出そうではないか。「私は人間である。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない」と。
(本文より)
表紙の絵が魅力的で購入。異国の緊張感ある背景と、少数民族や有色人種がたどる免れない運命の組み合わせが、読後の余韻を広げます。なぜか人にではなく、羽がぼろぼろのオウムに感情移入しました。
妙に心に残った一節がありました。「いちごおとし」…初夏はクマが子別れする季節。母グマは子グマが大好きな木イチゴを夢中で食べている間に姿を消すと、東北地方で語り伝えられている。これだけの物語りを表現できる単語があることに感動。