あの無限、この無限、どの無限?―数式のない数学の話(吉田 武)
あの無限、この無限、どの無限?―数式のない数学の話
吉田武『あの無限、この無限、どの無限?―数式のない数学の話』、日本経済新聞社、2002年
【徳武 葉子・撰】
評
虚数の本を読んでいたら深い森の中で立ち往生。サブタイトルの“数式のない数学の話”に呼び止められ、この本を手に取る。落語の寿限無などを横におきながら読むと理解が深まりそう。無限の手のひらに自分が存在している確認をしたうえで、虚数と向き合うべきだった。“数”ひとつをとってみても、認識がややこしい無理数のほうが圧倒的多数である。それなのになぜ人は目に見えるものだけを信じてやまないのだろうか。10cmのヒモを半分にしたら5cmだと断言したところで、切り口はいつも無理数なのに。もしかしたらお経には以上のようなことが書いてあるのかもしれない。インド~中国に思いを馳せる。
p.3 無限の未来と有限の今
無限…明日の不確かな可能性に思いを致すあまり、今日の確かな努力を忘却の彼方へと追いやる
p.22 砂の真砂は有限でも、盗人の種は無限
無限…浜の真砂は尽きるとも、世に盗人のタネは尽きまじ
p.108 数学的想像力は美的なもの、芸術的なものを要求する
人類は数学という宝物を手に入れた。この宝物は人類の想像力が作り上げたものであり、想像力はあらゆる美的なもの、芸術的なものを要求します。
p.130 有理数の全体
どのようなわずかな隙間にも無数に数を抱えている有理数。しかし、その全体を調べてみると、結局自然数と同じ程度にしか数は存在していない。